ネコスキーの日記

第8回電撃掌編王 落選作Part1

第8回電撃掌編王応募の三作品のうち、一作品目です。

テーマは「秋」「学校」「ツンデレ」で2000文字以内。

よかったら見てね(´▽`






パパなんて大嫌い!(基本的には)

 涼しい風が窓の隙間から吹き込んでくる、そんな秋の昼下がり。一定のリズムで黒板を叩くチョークの音を子守唄に、机に突っ伏して眠っている生徒の姿もちらほら見える。亜紀もまた、隣でのん気に眠りこけている男子生徒と同じように、自分も夢の中へ行ってしまいたい、などと思ったが、この授業ではそれも許されない。頬を軽くつねって目を覚まそうとしている亜紀の耳に、彼女の天敵の声が届いた。
「それじゃ、この英文を…高倉、訳してみろ」
「…はい」
 自分の名字を名指しされ、亜紀はいつもより緊張しながら立ち上がった。予習はしてきた、それは問題ない。問題があるとすれば、全く別のところだった。
「…ナンシーは言いました。ごちそうさま、タケシ。本当は一人で食事したかったのだけど、誘ってくれてありがとう」
 黒板に記された英文を訳しながら、亜紀はちらりと教師の表情を伺った。なぜか彼は、目を閉じながら亜紀の英文訳を聞いている。いつもは、そんなことはしないのに。
「…タケシは言いました。気にしなくていいよ。それよりこの後、一緒に遊びにいかないかい?」
 このまま、何事もなく終わってよ、と亜紀は心の中で念じた。教師は、なぜか小刻みに震えている。
「…ナンシーは言いました。それは、すごくお断りするわ。タケシは額に手を当てて、オー、これは手厳しい…」
「ブラボォ!」
 亜紀の英文訳が全て終わるより先に、教師がすっとんきょうな声を上げた。びくり、と亜紀の体がはねる。
「素晴らしい! 素晴らしいよ、亜紀! 完璧な訳だ!」
「ちょ…ちょっと、先生。下の名前で…」
 しかし、彼の暴走は止まらない。
「ああ~…やっぱり亜紀は天才だな…。可愛いし、頭もいいし、料理は…ともかくとして、本当によく出来た子だなぁ…」
 教師の暴走に、何事か、と目を覚ました生徒達も、いつものことか…と再び机に突っ伏してしまった。
「さすがは俺の娘だ!」
 彼なりの、最大級の賛辞なのだろうか。しかし当の亜紀は、身体を小刻みに震わせて、顔は真っ赤、恥ずかしくて、今にも逃げ出したいくらいだった。思いっきり、机に掌を打ち付けて、
「…あーっ! やめてよ! もうっ! パパなんて、大嫌い!」

下校中、先程の痴態を思い出しながら、亜紀は親友の由香里に愚痴を零していた。
「もうっ! ほんっとに信じらんない!」
 まぁまぁ、落ち着いて、となだめる親友の言葉も、今の亜紀には届かなかった。
「これが落ち着いてられますかっ! しかもあの後、なんか打ちひしがれて早退しちゃうし…。そんな教師、聞いたこともないっての!」
 それは確かに、と由香里も苦笑する。
「普段は、大人の男性、って感じで、かっこいいのにね…」
 そんな由香里のちょっとした褒め言葉も、今の亜紀には火に油であった。
「どぉーこが! 高校生にもなったのに、一緒にお風呂入ろうとする変態馬鹿親父よっ!」
「…そ、それはちょっと、イヤかもね…」
「でしょ!?」
 結局亜紀は、家に到着するまでずっと、怒りっぱなしであった。

 昨晩、父は帰ってこなかった。大嫌い、などと言ってしまったこともあって、少しだけ心配していた亜紀だったが、あれはパパが悪いっ! と断じて、出来るだけ気にしないように努めていた。
「パパは先に、学校に行ったわよ~」
 呑気な母親の声が聞こえてきた。自分が眠っているうちに帰っていたのか、と亜紀は少しだけ安心した。
「あっそ、どうでもいいけどねっ」
 玄関で靴を履き、さて私も学校に、と歩き出そうとした亜紀を、母親が呼び止めた。
「待って、亜紀ちゃん。これ、パパのお土産」
「え? お土産って…」
 戸惑う亜紀の手に渡されたのは、まんじゅう。といっても、普通のまんじゅうではなく、
「…も、もみじまんじゅう?」
「この前テレビに出てて、亜紀ちゃんが食べた~い、って言ってたでしょ? それで、広島まで買いに行ったんですって」
 ここは、東京だ。広島までは、新幹線でも片道五時間はかかる。まさか、昨日早退したのは、広島に行っていたというのだろうか。食べたい、と軽く口にしただけの、娘のために。
「…バッカみたい」
 そんなことで、学校を早退して、皆にも迷惑をかけて。
「いってきます」
「いってらっしゃ~い」
 間延びした母の声に見送られながら、亜紀は家を出た。父はいつも、そんな風に娘のことばかり優先して、行動していた。風邪を引いた時も、足をくじいた時も、いらない、と亜紀が言っても、構わず亜紀を背負って。
「だから、パパなんて大嫌いなのよ」
 歩きながらもみじまんじゅうを頬張って、亜紀はぽつりと呟く。
「…基本的にはね」

―終わり―



書き終ってから見直すと、大分荒さが目立つ作品でした。
文章の細かいところとかまだまだ…まぁ精進精進(´ω`*
娘が父にツンデレっていうのは書いてて楽しかった…。
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by necosuky | 2007-08-11 00:14 | 掌編小説
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