お題募集による掌編小説 Part2「男の友情」
第二回は、devedeから頂いたお題、
「男の友情」 です。 タイトル:夕焼け空にぶつかりあって 河川敷で男子高校生が二人、夕焼け空を背景に睨み合っていた。 それを少し離れた位置から、女子高校生がうろたえながら見つめている。 やや背が高めの、スポーツマン風の男が口を開く。 「おい山岡……何でお前がここにいるんだよ」 威嚇するように睨み付ける男を、山岡と呼ばれた茶髪の男は怯むことなく睨み返した。 「そりゃこっちの台詞だろうが高田……何でお前がここにいんだよ」 睨み合いながら、高田が距離を詰めつつ山岡を威嚇する。 「俺は今から中沢さんに告るんだよ……邪魔すんじゃねぇぞコラ」 「あ? 中沢さんに告るのは俺だっつーの……寝ぼけてんじゃねぇよオラ」 「お? コラやんのかコラオイコラ」 「あ? やってやんよオイこの野郎オイ」 「あ、あの、二人とも落ち着いて……」 二人の様子を見かねて中沢が仲裁に入ろうとするが、勢いよく彼女のほうに振り向いた高田の妙な気迫に遮られ、何も言えなくなってしまった。 「俺……中沢さんのために甲子園いきます! お、俺の隣で見ててください!」 「あ!? テメー何勝手に告ってんだよ!」 負けじと山岡も声を上げる。 「中沢さん……俺、アンタのために歌います! 俺の歌を聴いてください!」 「お!? テメーの歌なんて誰も聴きたくねーんだよ!」 「あ? ざけんなテメーオイ邪魔すんなオイ」 「お? 邪魔してんのテメーだろコラなめんなコラ」 「やってやんよオラァァァァ!」 「上等だコラァァァァ!」 こうして、二人の壮絶な争いの幕は切って落とされたのだった……。 「チャラ男は引っ込んでろぉぉぉ! 俺の白球を受け止めてくれるのは中沢さんしかいねぇんだよコラァァァ!」 「うるせぇぇぇ! レフトはおとなしく中継に返球してろぉぉぉ! 俺の歌は中沢さんのためにあるんだよオラァァァ!」 「大体テメードラムだろうがぁぁぁ! 歌わねーじゃねーかコラァァァ!」 「お前この前代打と交代させられてたじゃねぇかぁぁぁ! どうせ恋愛も代打交代させられるんだろうがオラァァァ!」 「コラァァァ!」 「オラァァァ!」 二人の腕が交差し、拳が互いの頬を打ち抜いた。 膝をついた二人はやっとの想いで立ち上がりながら、共に「もう立つ事すらままならない……」と呟いた後、同時に中沢のほうへと振り向いた。 「中沢さん……俺と青春……追いかけてくださいっ……」 「中沢さん……俺の歌……聴いてくれっ……」 「あ、あの……」 中沢は戸惑うように顔を背け、少しだけ間を置いて、二人に自分の想いを打ち明けた。 「ごめんなさい! 私、倉田先輩と付き合ってるから……だから、ごめんなさい!」 その言葉を残して、中沢は何処かへと走り去ってしまった。 残された二人は、呆然とそれを見送ることしか出来なかった。 「……倉田って、バスケ部のエースだっけ」 「……ああ、そうだな」 「……彼女いるとは聞いてたけど、中沢のことだったんだな」 「……ああ、そうだな」 その瞬間、乾いた笑い声を上げながら、高田と山岡が肩を組み合う。 「ははは、山岡、お前いいパンチ持ってんじゃねーか」 「ははは、高田、お前のパンチも効いたぜ」 「ははは、お前いいドラマーだよ、バンドにかかせない存在だよ」 「ははは、お前こそいいレフトだよ、きっとホームまで一発で返球できるよ」 「……山岡」 「なんだ? 高田」 「泣いてもいいですか?」 「うん、俺も」 夕焼けの日差しに照らされた河川敷に、二人分の男の泣き声が響いた。 彼らが手に入れられなかったものは、青春の1ページにほろ苦い思い出として残ることだろう。 だけど彼らはその代わり、かけがえのないものを手に入れたのではないだろうか。 そう、かけがえのない「男の友情」を手に入れられたのではないだろうか。 実際のところはどうなのかとか、そんなのはどうでもいい。 ただ、そう思っていないと、二人もやってられないと思うのだ……。 ―完― 第二回はコメディになりました。 「男の友情」と聞いて、とりあえず殴り合わせとこう、という安易な発想から出来上がった作品です。 だけど私達はその代わり、かけがえのないものを手に入れたんじゃないかな。 そう、かけがえのない「勢いで突っ走る」という後ろを振り返らない勇気的なものを手に入れたんじゃないかな。 まぁそれは置いといて、お題をくれたdevedeに感謝しつつ、第二回はこれにて終了!
by necosuky
| 2007-09-04 19:01
| 掌編小説
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