ネコスキーの日記

お題募集による掌編小説 Part5「心残り」「明日」「お気に入りの場所」

第五回は、桜瀬さんから頂いたお題、

「心残り」 時代「明日」 場所「ネコさんのお気に入りの場所」(定義上、私ネコスキーのお気に入りの場所とします)

です。








タイトル:消えない場所


 中学生十五歳の夏頃、祖母の法事のため、母方の田舎へ行っていた。
 子供心に退屈だった法事が終わって(不謹慎と言われるかもしれないけど)、田舎の家で一息ついていた。
 ふと思い立って、近所を散策してみようと外へ出かけた。
 実家とはまるで違った風景、目一杯に広がる田んぼ、一方通行かと思うほど狭い道路。
 田舎へ来るたびに新鮮に感じる空気だった。
 犬の散歩をしていた近所の人達に挨拶しながら、普段と違った風景を眺めながら歩く。
夕焼けに照らされた田んぼの水面は、どこか幻想的な雰囲気を醸し出していて、思わず見惚れながら歩いていると……田んぼに片足を突っ込んでしまった。
 正直、気分は一気に最悪になった。
 家に帰って着替えよう、と足早に元きた道を引き返そうとした、その時、
「ニャッ」
 短い鳴き声が聞こえてきた。
 声のする方を見てみると、灰色の毛並みの大きな猫が一匹ちょこんと座って、空き地の真ん中からこちらを眺めていた。
 そこに猫がいて、ここに猫好きがいる。
 もう、言葉はいらないと思う。
 あまり目を合わせないように注意しながら、猫が警戒しないように、ゆっくりと近づいた。
 しかし、警戒するだろうと思っていた猫は、驚くほどすんなりとこちらへ寄ってきた。
 差し出した手に、自ら擦り寄ってくる。
 ふわふわした毛の感触が、手のひらをふわりと包む。
 随分人に慣れている猫だった。
 夢中で猫を撫でていると、新たに一匹、少し小さめの三毛猫が寄ってきた。
 更に一匹、更に一匹と猫は集まって、空き地に軽く猫だまりが出来る。
 猫好きにはたまらない、その場所はすぐに、お気に入りの場所になった。
 日も沈んでしまって、名残惜しくはあったが、いい加減帰ることにした。
 ジーンズの左足にこびりついていた泥も乾いてしまい、その部分も気持ち悪くて仕方なかった。
 また明日来よう。
猫の甲高い鳴き声に後ろ髪を引かれながら、その日は家路についた。


次の日、あの空き地には行くことは出来なかった。
なぜか例年と違って、その年は実家に朝早くに帰ることになってしまったからだ。
心残りだけ残して、田舎を立ち去った。


 次の年の夏休みに、再び田舎へ訪れた。
 日が落ち始めた頃、ふと例の空き地を思い出し、去年の心残りを晴らすべく、コンビニで猫缶を購入して早足でそこへと向かった。
 以前と変わらない風景、目一杯に広がる田んぼに片足を突っ込まないように、と気をつけながら歩いていく。
 ようやくやってきたあの空き地、いや、空き地だった場所からは、猫の鳴き声は聞こえなかった。
 空き地だった場所には、真新しく小奇麗な家が建っていて、お気に入りだった場所は、家族がかけがえのない想い出を過ごす場所になっていた。
 その家族には申し訳ないけど、少しだけ残念な気持ちを抱えながら、家路を辿ることにした。
「にゃあ」
 か細く高い鳴き声が、耳に届いた。
 きょろきょろと辺りを見回すと、草むらが音を立てて揺れたような気がした。
 音がするほうへ、足首の高さほどの草を踏みながら進んでいった。
 少し開けた場所、若干草が少ない場所に、灰色の毛並みの小さな子猫が佇んでいた。
 もしかしたら、去年の猫の子供かな、などと考えていたら、新たに猫が一匹現れた。
 更に一匹、更に一匹と猫が集まり、以前と同じような猫だまりが出来上がる。
 ここはまた、お気に入りの場所になった。
 たとえばここもまた、いつか無くなってしまうかもしれない。
 それでも、お気に入りの場所は消えることなく、またこうして繰り返して行くだろう。
 お気に入りの場所は、ずっと消えずに続いていく。


 ―完―


 第四回……こういうのって、何小説って言うんでしょうね(ぁ)

 一人称の完全排除。猫以外の台詞は完全に無し。

 色々新しい方法を試した作品でした。

 ちなみにこれは、割とノンフィクションです。ええ、田んぼに足を突っ込みましたとも(農家の人ごめんなさい)

 そういえば、自分の思い出(みたいなの)を小説に書いたのは初めてです。

 お題くださった桜瀬さんに感謝しつつ、第五回はこれにて終了!
[PR]
by necosuky | 2007-09-10 19:16 | 掌編小説
<< お題募集による掌編小説 Par... お題募集による掌編小説 Par... >>



明日っていつの明日よ?
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
小説関係と注意書き
秘密結社有限会社デベデ


当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。
お気に入りブログ
最新のトラックバック
芝刈り機
from 芝刈り機
ねこ鍋
from ねこ鍋
お嬢様の証明
from 隠れた面に魅力がいっぱい!..
「女性の美」
from 谷水の日記
スポーツマンシップ
from 豊留の日記
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧