ネコスキーの日記

第9回電撃掌編王 落選作Part1

第9回電撃掌編王応募の四作品のうち、一作品目です。

テーマは「冬」「学校」「サンタクロース」で2000文字以内。

見てくださったらうれしい(´▽`)









「ねぇ、荻原くん。サンタクロース、やってみない?」
 放課後の教室で、帰り支度していた俺に明るく話しかけてきたのは、隣の席に座っている浅野悠香。高校生にしてはかなり背が低く、仕草もどこか子供っぽい。
 運動もからっきしで、学業のほうも達者とは言えない……けれど、勉強に関しては俺も人の事を言えたものではないので、あまり言わない。
「サンタクロース?」
「うん、サンタクロース」
 それから浅野は早口で、クリスマスにこの高校で近所の保育園のクリスマス会をやること、その日は冬休みに入っているから学校が空くこと、浅野はその保育園でバイトをしていること、この高校の校長とその保育園の園長はちょっといい関係らしい……など、特に関係なさそうなことも含めて、順序めちゃくちゃで説明してくれた。
 保育園のクリスマス会なんだから保育園でやればいいのに、という疑問は置いといて、一番の疑問を投げかける。
「なんで俺に?」
 浅野のことは一応、中学校の頃から知っていた。
他の人よりワンテンポ遅れて成長しているような彼女は、良くも悪しくも目立っていたし、その割りに人付き合いが抜群に上手い彼女は、校内でもちょっとした噂になっていた。
 とはいえ俺はこの通り平凡な人間で、彼女との接点も、中学の頃に友人同士のクリスマス会で一緒した事と、この高校に入学して初めて同じクラスになった、というだけである。
 まさか、実は俺に気があるとか? おいおい。
「隣の席だし!」
 邪気の欠片も無い笑顔でそう言われた。いいんですけどね、別に。
「それに荻原くん、サンタクロース似合いそうだし」
 褒め言葉のつもりだろうけど、全く嬉しくない。まぁ、それはそれとして、
「俺はやめとくよ」
「えっ、なんで?」
 バイト代も出るよ、と食い下がる彼女。とはいえ、
「サンタの格好するの恥ずかしいしさ」
 サンタお決まりの真っ赤な服を思い出して、素直な感想を述べる。
 だが、浅野は納得していない様子だ。
「そんなことないよ、かわいいよ」
 可愛くても嬉しくないと思う、健全な男子、俺。
「それに、ほら、意味無いって」
「えっ?」
 照れ隠しの勢いで出た言葉に、浅野の顔色が変わる。でも、俺の言葉は止まらない。
「サンタなんてさ、小学生くらいになったら、結局ネタバレしちゃうし。そういうの何ていうか、無駄じゃん」
 そんな俺の言葉を聞いて、浅野の表情は暗く沈んでいた。
「私は、中学生まで信じてたもん……」
 消え入るような声で呟く浅野。今まで見たことのない彼女の姿に、俺は動揺を隠せない。
「プレゼント貰って、嬉しかったもん。無駄じゃないもん」
 首から下げた、銀色の安っぽいチョーカーを握り締め、浅野が呟く。中学最後のクリスマス会で、プレゼント交換用に俺が用意した物に似てるけど、多分気のせいだと思う。
 勢いよく立ち上がった浅野。驚く俺。
「無理言ってごめんね。他当たるから、気にしないでね。それじゃ」
 俺の顔を見ないまま、浅野は教室を出て行こうとする。
 途中、教卓に勢いよくぶつかっている辺りが、何とも鈍くさい。
 ああ、もう。
「浅野、待ってくれ!」
 去り行く恋人を引き止めてるみたいだな、と案外冷静な俺が心の中で囁く。
 でも、この後に続くのは、愛の言葉ではない。
「サンタクロース、やるよ。いや、やらせてくれ!」
 教室にほとんど生徒が残ってないのが救いだった。まぁ、いくつかの視線は痛かったけれど。
 そして浅野が、ゆっくりと振り返った。
「……うん!」


 クリスマス会は意外なことに、大盛況で終わった。
 サンタの例の赤い服も、着てしまえば羞恥心も薄れるもので、それほど気にはならなかった。
 それにしても、保育園の先生が一人も手伝いに来てくれないとは……。
「保育園の先生達ね」
 トナカイの着ぐるみを着た浅野が、急に語り始める。
 浅野がトナカイの方がいいと言ったからであって、決して男尊女卑とかではないということはご理解頂きたい。
「毎年この時期はクリスマス会で、恋人さんとか、家族さんとかにサービスしてあげられなかったんだって。それで前の日とか次の日に持ち越しちゃうらしいんだけど、それじゃ気分出ないよね」
 ……なるほど。今年くらいは、クリスマスのその日にゆっくりと過ごせるように、という浅野の配慮だったわけだ。
「特別な日は、大事な人や……好きな人と一緒に居たいって思うの、当然だもんね」
 浅野はロマンチックなことを言ってるが、それじゃ俺とキミはどうなるんだって感じだ。まぁ、俺には彼女なんていないけど。
「皆、喜んでたね」
 トナカイのかぶりものを外して、浅野は屈託の無い笑顔を見せた。
「無駄なんかじゃ、ないよね」
「……だよな」
 それはもう、認めるしかないだろう。彼女の、こんな笑顔を見せられては。
「来年も、よろしくね」
「……って来年もやるのかよ!?」
「ダメ?」
 上目遣いで、そんな事を聞かれると、
「……気が向いたらで」
 それもまぁ、悪くないかな、なんて思ってしまうのだ。

―終―


ラブコメドゥボエハァッ(´゚д゚)';.;*

書き上げたのはお題掌編の前なので、やっぱり粗いかなー……。

これも2000字以内に収めるために、結構削りました。
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by necosuky | 2007-10-11 19:33 | 掌編小説
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