ネコスキーの日記

第9回電撃掌編王 落選作Part2

第9回電撃掌編王応募の四作品のうち、二作品目です。

テーマは「冬」「学校」「サンタクロース」で2000文字以内。

見てくれるのカイ!?(´▽`)






 世界のどこにあるのかは定かでないが、とにかく世界のどこかにあるというサンタクロース養成学校。
 ここでは、クリスマスのその日に向けて、子供達にプレゼントを配るという大任を果たすべく、サンタクロース候補生達が日夜、己の技を磨いていた。
 今の時期は煙突のある家も少ないので、ピッキングは必須科目。住人と鉢合わせてしまった際、その状況を切り抜けるため、麻酔銃を持参するのも今では常識だ。無論、侵入の形跡を残さない技など、基本中の基本。
 何というか、スパイ顔負けである。
 しかし今の時代、サンタクロースを志す人間の数に対し、プレゼントを貰う立場の、いわゆる『良い子』が減ってきているのである。
 そして今年、ついにやってきたクリスマス前日、多種多様のサンタクロース候補生達が、今年のサンタクロースの座を手にするべく、一同に介したのである。
 誰もが、己こそ真のサンタクロース、という自信に溢れていた。
 候補生では唯一の日本人、黒須三太郎は、欧米系の親友スティーブと共に、名立たる候補生達の面々に圧倒されていた。
「おい、スティーブ。見ろよ、今年もサンタ四天王の奴らきてるぜ」
「オー、黒須。今年は例年以上の激戦の予感がするぜ。去年のミス・サンタコンテスト優勝者、サンタ・クイーンもいたぜ」
「まいったなスティーブ。これじゃ今年も、俺達にお役目が回ってくる可能性は低そうだぜ」
「弱気になるなよ。ジャパンのことわざでよく言うだろ。隣の芝生は青く見えるってさ」
「オー、スティーブ。意外と博識なんだな」
「そうだろ? 先日、祖国のワイフにもこのことわざを教えてやったらさ、こんな物を渡されちまったよ」
 そう言いながらスティーブが、芝刈り機を取り出す。
「隣の芝生を羨ましがってる暇があったら、うちの芝生を綺麗にしろってさ。HAHAHA!」
「オー、スティーブ。そいつぁワイフの言う事も最もさ。ハッハッハ!」
 そんなやり取りは置いといて、ついに今年も、血で血を洗う、戦いの火蓋が切っておろされることになった。
 真のサンタクロースと認められるのは、真の強者のみ。
 二十四代目校長キング・サンタ主催の元、今年のサンタクロース枠五名の座を争って、『クリスマス戦争』が、今始まった……。

 戦いが始まって約2時間、脱落者が続々と出ていく中、黒須とスティーブは辛くも生き残っていた。
「ここまでは順調だな。このままいけば、今年のサンタ枠に入れるかもしれないぜ」
「ああ、お前の読みどおりだな、スティーブ。漁夫の利作戦とは、恐れいったぜ」
「よせよ、照れるじゃないか。……ところで、こいつを見てくれ」
 そう言いながら、スティーブがおもむろに懐から写真を取り出す。
 写真には、一人の幼い娘が写っていた。
「可愛いだろ? 俺の娘でな、サンディっていうんだ」
 目を細めながら娘を自慢するスティーブは、どこか誇らしげだった。
「俺……この戦争が終わったら、娘にプレゼントを届けるんだ……」
 何かの地雷を踏んだような気がしたが、黒須は気のせいだと割り切った。
「そうか……じゃあ、何としても生き残らないとな!」
「ああ! ……ギャアー!!」
 不用意に立ち上がったスティーブを、何者かの銃弾が襲った。
 念のため注意しておくが、麻酔銃である。
「スティーブ! 大丈夫か!? スティィィブ!」
「へへ……俺はもう、ダメだ……。何だか、眠たくなってきちまったぜ……」
 娘の写真を握り締めて、スティーブは力無く呟く。
「黒須……俺の娘に、プレゼントを届けてやってくれよ……」
「スティーブ……スティィィィィィブ!!」
 そんな感じで、スティーブは脱落した。
「スティーブ……見ていてくれ。俺、きっとサンタクロースになってみせるぜ……!」
 歴代もっとも苛酷と言われたこの年の『クリスマス戦争』。
黒須はこの後、『激突! 四天王VS無名の日本人』『ブラックサンタとの因縁!』『謎の覆面、キング・サンタマスク来襲!』『戦場のロマンス、サンタ・プリンセスとの邂逅』『黒須三太郎、覚醒!』などなど、関係者間に様々な伝説を残していくのだが、果たして彼がサンタクロースになれたのかは記録されていない。
ただ、欧米のとある一軒家では……。
「オー、ママ。見てよ。サンタクロースからのプレゼントが靴下に入っていたわ」
「オー、サンディ。それは、私がスティーブにあげた芝刈り機よ」
「それじゃあ、パパはサンタクロースになれたのかな?」
「どうかしら? もしかしたら、友達かもしれないわ」
「HAHAHA! そいつぁ美しい友情物語だ!」

 世界のどこにあるのかは定かでないが、とにかく世界のどこかにあるというサンタクロース養成学校。
 今日もそこで、サンタクロース候補生達が、夢のために戦い続けているという……。

―終―


こういう破天荒なコメディは書いてて楽しいです。
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by necosuky | 2007-10-13 17:22 | 掌編小説
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