ネコスキーの日記

第9回電撃掌編王 落選作Part3

第9回電撃掌編王応募の四作品のうち、三作品目です。

テーマは「冬」「学校」「サンタクロース」で2000文字以内。

見られてなんぼ(´▽`)






 サンタクロースなんて、嘘っぱち。
六歳の誕生日を迎える頃には、そんなことわかっていた。冷めた風にそう言う僕のことを、「可愛くない」という大人は少なくない。今年八歳を迎える頃になると、「可愛い」なんて言ってくれる大人は、親くらいしかいなくなっていた。
だけど僕ら二人は、山の上にある小学校の屋上から街を見下ろし、夜風の冷たさに身体を震わせながら、サンタクロースを探していた
 朋香は、サンタクロースの存在を信じて疑わない女の子。
 サンタクロースは去年のクリスマスから、彼女の元へは来なくなってしまった。
 プレゼントはお母さんから貰ったらしいけど、サンタクロースがこっそりと靴下に入れてくれることはなくなったのだ。
 僕はその理由を知っていたけれど、それを伝えることは出来なかった。
「浩太くん、ちゃんと探してる?」
 すっかり鼻の頭が赤くなった朋香が、急に僕に訊ねてきた。
「探してるよ」
 それは嘘だったけど、朋香は話す時間すら惜しむように、再びサンタクロースを探し始める。
 僕も金網に張り付き、街を見下ろした。
 少し前まで明かりが灯っていた家々も、今ではほとんど真っ暗になった。
 サンタクロースを探し続けて、何時間が経っただろう。
 昔絵本で見たような、トナカイに乗ったサンタクロースなんて見つからないし、毛布にくるまっていてもこの寒さは耐えがたい。
 それでも僕は、何かにすがるように必死でサンタクロースを探す朋香に、あきらめようなどとは言い出せなかった。
「ねぇ、浩太くん」
 街を見下ろしながら、朋香が呟くように語り始める。
「浩太くん、サンタさんなんていない、って言ったことあったよね」
「……うん」
 今から二年前のことだ。
 サンタクロースの正体は、お父さん。
 あの頃はそんなことを言いふらして、ちょっとだけ他の子よりも大人になった気がして、得意になっていたのだと思う。
 それで朋香と大喧嘩して、結局僕のほうが折れて、サンタクロースはいる、とその場しのぎで口にした。
「あたしもね、本当は知ってたんだ。サンタさんは、パパだっていうこと」
 朋香の顔を見る。
 寒いのだろうか、それとも悲しいのだろうか、唇が小刻みに震えていた。
「浩太くんの言葉が気になって、二年前のクリスマスの時ね、寝たふりして見てたんだ。浩太くんの言う通りだった。プレゼント、靴下に入れてくれたの、パパだった」
 いつの間にか朋香は、サンタクロースを探すのをやめて、俯いていた。
「去年もね、寝たふりしてたんだ。お母さんにプレゼントもらっても、もしかしたらパパ、来てくれるかもって。でも、朝まで待っても、来て、くれなかった」
 朋香の声が、涙で詰まっていた。
「バカだよね。パパ、死んじゃったのにね。来てくれるはず、ないのにね。だけど、もしかしたら、もしかしたら来てくれるかもって。あたし、会いたくて、どこかにいるんじゃないかって、探してるんだ。サンタクロースになって、あたしに会いにきてくれるんじゃないかって、バカだよね」
 僕は、何て言ったらいいかわからなかった。
 サンタクロースなんていないって、大人ぶって言うことは出来ても、こんな時に、朋香になんて声をかけたらいいのか、わからなかった。
 バカは僕だ。なんて言えばいいんだ。どうすればいいんだ。
 探していた。サンタクロースを、今だけは信じて探していた。
 いいじゃないか、夢見たって。サンタクロースはいないなんて、言わなくていいんだよ。
 祈るような気持ちで探していた僕の目に、信じられないものが映った。
「朋香! 朋香、あれ見て!」
 涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて、朋香が僕の指差すほうを見つめる。
 そこに、サンタクロースはいた。
 絵本で見るような、トナカイをひいたサンタクロースが、確かに空を駆けていた。
「あっ、ああっ! うそ……うそっ!」
 硬い金網の隙間から、振り絞るような声で、
「パパ! パパぁぁぁ!」
 朋香が、叫んでいた。
 朋香の声に気づいてくれたのか、サンタクロースは朋香に向けて小さく手を振り、空の彼方へと消え去っていった。
 サンタクロースは、確かに存在していた。
 それは紛れもなく、朋香のためだけのサンタクロースだった。


 白みを帯び始めた空を、僕らは寄り添って見つめていた。
「サンタさんは、やっぱりパパだったね。浩太くんの、言う通りだった」
 空を見つめながら、朋香が呟いた。
「うん、でも、僕の負けだと思う」
「負け?」
 首を傾げる朋香に、僕は頷いた。
「朋香の言うとおり、サンタクロースはいたから」
 そう言って笑って見せると、朋香も釣られて笑ってくれた。
 サンタクロースなんていない、なんて言わなくたっていい。
 僕らはまだ子供なんだ。
 まだまだ夢見がちでも、いいじゃないか。

―完―


シリアス系です。

学校と繋げようとすると、見晴らしのいい屋上に行くしかなくて…!
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by necosuky | 2007-10-15 16:13 | 掌編小説
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