ネコスキーの日記

第9回電撃掌編王 落選作Part4

第9回電撃掌編王応募の四作品のうち、四作品目です。

テーマは「冬」「学校」「サンタクロース」で2000文字以内。

見れられりゃー(´▽`)







タイトル名:黒い服着たサンタクロース

本文

 深夜の小学校。誰もいない真っ暗な教室の片隅にある掃除用具入れの中で、裕太は幼い身体を震わせていた。
 廊下には、何者かの靴音が響いている。
 靴音が止まり、別の教室の扉が荒々しい音を立てて開かれるたびに、裕太は身体を恐怖に震わせた。
 なぜ、裕太はこんなところに隠れていなければならないのか。
 その理由は、クリスマス会の帰り道で起こった出来事にあった。


 裕太はこの日、一人で家路を辿っていた。
 一緒にクリスマス会に参加していた友達などは、何かと理由をつけて、裕太と一緒に帰途につくことを拒んだ。
 苛立たしげに道端の小石を蹴りながら歩く裕太を、背後から何者かが襲った。
 裕太の目に映ったのは、化け物のような顔をしている、真っ黒な服を着たサンタクロースだった。
 裕太は叫びながら逃げ出したが、行く先にことごとく、黒い服を着たサンタクロースがその姿を現し、裕太の行く手を遮った。
 ようやく裕太は、自分や友達しか知らない裏道を使って、サンタクロースを振り切ることが出来た。
 しかし、また見つかるのではないか、捕まったらどうなってしまうのか、と恐怖に駆られた裕太は、自分が通っている小学校へと逃げ込むことを決めた。
 逃げ回っている内に、小学校の近くまで来ていたのだ。
 そうして、自分が通う教室の床に座り込んでいる時、廊下から靴音が響いた。
そして裕太は慌てて掃除用具入れの中に隠れて、息を殺して身体を震わせているのだ。


 大きな音を立てて教室の扉が開かれると、裕太は涙目になりながら口元を押さえ、必死に息を殺した。
 ロッカーの空気穴から覗き込むと、黒い服を着たサンタクロースが教室に入ってきたのが見えて、裕太はよりいっそう身体を強張らせた。
 終業式の前日、裕太は担任の先生から、黒い服を着たサンタクロースの話を聞いていた。
 悪いことばかりする子供や言うことを聞かない子供は、黒い服を着たサンタクロースがやってきて、どこかへと連れ去ってしまうんだ、と。
 どうせ、いたずらばかりする自分を脅かすための作り話だろう、と裕太は鼻で笑っていたが、今となってはそんな余裕などない。
 いたずらばかりしてごめんなさい、もうしませんから、許してください、と裕太は心の中で何度も謝った。
 祈りが通じたのか、黒い服のサンタクロースは、裕太が隠れているロッカーを調べることなく教室を出て行こうとする。
 助かった、と裕太は安堵のため息を吐いた……が、そこで異変に気づいた。
 去っていく靴音が、聞こえてこない。
 先程まで、廊下ではあれほど大きく靴音が響いていたというのに。
 がたん、と大きな音を立てて、ロッカーが揺れた。
 ロッカーの空気穴を覗き込み、黒い服を着たサンタクロースが、人間とは思えないような歪んだ笑みを浮かべて、
「見ぃつけた……」
 その瞬間、裕太は恐怖のあまり意識を失った。


 数名分、黒いサンタクロースの衣装を部屋の片隅に積み上げ、裕太の担任の先生と、数名の教師が集まって談笑していた。
「いやぁ、大成功でしたね」
 教師の一人が、缶ビールを傾けながら満足気に言う。
「全く、これで裕太くんも、少しは反省していたずらを控えてくれるようになればいいんですが」
 裕太の担任がため息を吐きながら、先程までかぶっていた化け物のお面を指先で弄ぶ。
 裕太のいたずら癖は、学校中の悩みの種。
 それを懲らしめるため、担任が裕太に黒い服を着たサンタクロースの話を吹き込み、クリスマス会の帰り道で裕太を驚かす計画を、一部の教師達で立てた。
 結果、裕太は喚きながら逃げ回り、計画は大成功に終わった。
「まぁ、さすがに少し、かわいそうでしたけどね」
「ははは、そうですね」
 とはいえ、正直なところは日頃の憂さ晴らしも兼ねていたので、教師達に罪悪感はほとんど無い。
 誰もが、計画の成功に心から満足していたのだ。
「ところで……」
 不意に、教師の一人が疑問を口にする。
「裕太くんは、どこまで逃げて行ったんでしょうね?」
 全員が全員、視界の悪い化け物のお面をかぶっていたためか、裕太の姿を途中で見失ってしまった。
 だが、裕太の担任は楽観的な意見を述べた。
「この辺には、子供しか知らないような裏道もありますし、私達では見失ってしまうのも仕方ないですよ。さすがに、もう家に帰っているでしょう」
 確かに、と教師達は、その言葉を笑いながら肯定した。


 その後教師達は、裕太が姿を消してしまったことを知る。
 あのクリスマス会の日から、裕太は家に帰ることも無く、どこかへと消えてしまった。
 裕太がどこへ行ってしまったのか、知る者はいない。
 ただ冗談めかして、いたずらばかりする裕太を、黒い服着たサンタクロースが連れ去ってしまったのではないか、と噂する声もあったという……。


(完)


ホラーです。

ホラー書いたの初めてかも!?
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by necosuky | 2007-10-16 22:36 | 掌編小説
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