第8回電撃掌編王 落選作Part2
第8回電撃掌編王応募の三作品のうち、二作品目です。
テーマは「秋」「学校」「ツンデレ」で2000文字以内。 なんだったら見てね(´▽`) Straight&Winding 昼休み、高校の廊下を、長く艶やかなハーフ特有の金髪を揺らしながら、自信満々に歩く女、岡野小菊。 彼女のクラスの隣、2年D組の扉の前で不敵な笑みを浮かべ、豪快に扉を開け放つ。 「正樹くん、いらっしゃいますのー!?」 威勢良く叫び、小菊は己の目標を、母親譲りの青い瞳で探す。いきなりの来訪に呆然とする生徒達の中に、赤坂正樹はいた。 「いましたわね、正樹くん! ごきげんよう!」 若干世間ずれした挨拶を述べながら、小菊は無遠慮に正樹の側へと歩み寄る。 「…またお前かよ、岡野」 小菊は2年生に進級してからずっと、正樹に猛烈なアプローチを仕掛けていた。 正樹はといえば、恋愛に興味が無いのか、他に思うことでもあるのか、小菊に対して冷たi 。しかし小菊は、そんな態度に臆することもなかった。 「うふふ…。今日もお昼は購買のパンですのね」 不敵な笑みを浮かべる小菊に、「余計なお世話だ」と正樹はそっぽを向いた。 しかし小菊は微笑み、手に持っていた四角い物体を正樹の机に置き、それを包んでいた布を開いた。 「…なんだこれ?」 「見ての通り、お弁当でしてよ!」 今までに小菊が仕掛けてきた作戦、<桜の妖精、花咲小町作戦>、<恐怖! 幽霊と可愛いあの子はあなたの隣に…作戦>、<海辺のマーメイド作戦>などは、どれも空振りだった。 だが今回の、<食欲の秋、あなたのお腹と心は私で一杯、手作りお弁当作戦>には、確かな勝算があった。 「さぁ! 私の手作りお弁当、受け取ってくださいませ!」 手作りという言葉に、正樹がしかめっ面を見せる。学内でも有名な箱入りお嬢様である小菊が、手作りで作った弁当と聞くと、不安を覚えずにはいられない。 「いや…俺、パンあるし」 「そして私も一緒に受け取ってくださいませ!」 「人の話聞けよ」 「おーっほっほ!」と昔のドラマで見たような笑い声を上げ、小菊は去っていく。 「お弁当の箱は、捨てていただいても構いませんわ! 一向に!」 正樹の返答を聞かず、小菊は教室を出て行く。出て行く寸前、恐る恐る弁当箱を開いた正樹の、「…う、うおっ…」という声が耳に入り、満足気に小菊は自身のクラスへと戻っていった。 普段は人が少ない放課後の図書室に、図書委員である小菊目当ての男子生徒が何人か見える。当の小菊は、昼休みの威勢はどこへやら、物思いに耽ってため息をついていた。 「…正樹くん、お弁当、喜んでくださったかしら…」 一人になると、小菊は急にしおらしくなる。ため息をつき、2年生に進級した日のことを思い出していた。 放課後、迎えの車を待っていた小菊に、外国人の男が絡んできた(道を尋ねようとしただけ)。 父は日本人だが、小菊はイギリス人の母親の血を色濃く受け継いだのか、見た目はほぼ外国人。だが、育ちはずっと日本なので、日本語以外は解らない。 不意に近づいてきた男に、小菊は絹を裂くような悲鳴をあげた。 「へっへっへ、助けなんか来ねぇよ」 男が何を言っているのか解らないが、小菊は勝手にそう解釈した。 「いや…誰か助けて…」 その場に座り込む小菊。助けなど来るはずもない、そう思っていた時…。 「うおらぁー!」 「ガッデーム!」 大体このような感じで、小菊の白馬の王子様は誕生した。その後、外国人男性(被害者)の誤解は解け、正樹は平謝りすることになったのだが。 とにかく、その時のことを思い出すと、小菊の胸は熱くなる。 「…うふふっ」 小菊が誰を想っているかなど知る由もない男子生徒達は、こうして今日も彼女に魅了されていった。 校門にやって来た小菊の前に、想い人の姿が現れた。 「あら、正樹くん。私を待っていてくださったのかしら?」 「…おう」 いつもと違う素直な様子の彼に、小菊は驚きを隠せない。 「…これ」 正樹が、手に持っていた弁当箱を渡す。 「…うまかった。お前、意外とやるじゃん」 「え…?」 思わず呆然とし、はっ、と我に返った小菊が、高らかに笑い声をあげる。 「おーっほっほ! 当然でしてよ!」 そんな小菊に、正樹は呆れ顔のまま呟く。 「それさえ無きゃな…」 「何か言いまして?」 「別に」 そっぽを向いて、更に一言。 「…ま、まぁ、また作ってくるっていうなら、食べてやってもいいぜ」 「え…? そ、それって…」 戸惑う小菊に詰め寄り、正樹は顔を赤くしながら釘をさした。 「か、勘違いすんなよ! パンばっかだと飽きるってだけで…それだけだからな!」 「プロポーズですの?」 「人の話聞けって!」 真っ直ぐで思い込みの激しい彼女と、ひねくれていて不器用な彼との関係は、まだまだ落ち着く様子はない。 -了- 男がツンデレ…だけどツンデレじゃない(と思う)ヒロインが目立ってた気が。 まぁいっかー。
by necosuky
| 2007-08-12 00:34
| 掌編小説
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